哲学対話
この冬も大学生と一緒に、ポーランド、チェコ、ドイツの5都市を訪ねてきました。
いつも個性的な学生たちとの旅は楽しく、発見が多いです。今回は特によく語り合う学生たちでした。自己紹介にはじまり、日頃の学生生活のこと、アウシュヴィッツやベルリンで見たことなど、朝ごはんを食べながら、移動の列車の中で、話がつきないようでした。
農学、文学、発達科学、理工学、文化構想学、医学、法学、ソーシャルワーク、教育など様々な専攻の学生たち10名です。愛媛、岐阜、三重、東京、福岡、宮城、兵庫、神奈川、新潟など出身も現在の居場所も日本全国ばらばら!
「日常ではホロコーストについて思うことを話せるような機会があまりない」という学生たちでしたが、アウシュヴィッツではガイドの中谷剛さんにこんな言葉をかけられました。
「(休みにお金をかけて)このツアーに参加した君たちは、日本では少数派かもしれない。でも多数派に疑問をもったときに、立ち止まれる勇気に期待してこの場所を案内するよ。世界規模で見れば、ここには200万人を超える人たちが見学に来ているんだから、自信をもって。」
そして、アウシュヴィッツを訪ねた日の晩も、夕食の席で一人ずつ思いを言葉にして伝えてくれました。
ワルシャワ、クラクフ、アウシュヴィッツ、プラハ、ベルリンで10日間を一緒に過ごして、すっかり仲良くなった10人は、名残惜しそうに帰国の途につきました。
帰ってきてからも、LINEでの会話が続いています。
小平市の市民平和集会で旅の感想を発表した学生がいました。Kokoroのイベントに参加してくれた学生たちもいました。その際に、聞いてみました。「どうしてみんなこんなに話せる仲間になれたんだろうね」
すると、成田空港からワルシャワに向かう途中、トランジットのヘルシンキ空港での待ち時間のあいだ、「自分は良い旅にしたいと思ってるから、みんなのことも教えて」(だったかな?)という感じで一人が口火を切ったそうです。そこから自己紹介や参加動機などいろんな話がはじまり、それを見ていた学生たちも、「あ、ここでは本音で話していいんだと思えた」と。学生曰く、「ストッパーが外れた」と(^^)。
ある一人の学生は、こう言っていました。「この旅で出会った仲間は、言葉につまっても、待ってくれた。話を聞いてくれた。」と。
それに対してさらに、「こんな記事があったよ」と紹介してくれた学生もいました。
「<哲学者どうしの挨拶は、「どうぞ、ごゆっくり」であるべきだろう。> ヴィトゲンシュタイン
鷲田さんのことば
生き方、世界の見方を変えるには、これまで身につけてきた思考の初期設定を書き換える必要がある。そこでは、急がされずに、滑りのよい言葉に流されずに、ああでもないこうでもないと道筋をじっくり探り、考え抜くタフさが要る。凭(もた)れかかれるものがないままにどこまで立ち続けられるかが試されるのだ。思考はいつもジグザグに進む。『反哲学的断章』(丘沢静也訳)から。」
この学生たちは10日間のヨーロッパでまさに思考の旅をしてきたのだなぁと感じます。
さて、そんな学生たちとこれからも思考と対話を続けていけたらと思い、下記のような時間を設けてみることにしました。初回は、大学生限定。アウシュヴィッツに行ったことがある人も、これから行ってみたい人も、参加OKです。一緒に話をしてみませんか。
対話は思考力を育む。でもそれだけじゃなくて、「探求の共同体」をつくることによって、人間関係の絆が深まる。アメリカの哲学者であるマシュー・リップマンの言葉を読みました。どんな時間になるかな~。
大学生協「テーマのある旅」ヨーロッパピーススタディツアーは、今年の9月も実施予定です。
4/21(土)は説明会があります。先月アウシュヴィッツとベルリンを訪ねてきた学生たちから直接話を聞くこともできます。歴史に触れる、異文化を体験する、感動を共有できる仲間と出会う、かけがえのない時間がつまった旅です。申込はこちらから→http://www.withnavi.org/theme/